松尾の独り言
ベストサポーティブケア
松尾です。
ベストサポーティブケアという言葉をご存知でしょうか。
医療の世界では、ベストサポーティブケア(BSC)やベストサポーティブテラピー(BST)という言葉が定着し、ローマ字3文字で患者様の最期の貴重かつ最も尊重しなければならない治療方針を医療者の中で正確かつ迅速に伝えることができるアルファベット3文字で頻用されています。
その定義は、がんに対する積極的な治療は行わず、症状を和らげる治療に徹することです。いわゆる緩和療法のことで、痛みをとったり、QOL(生活の質)を高めることを目的としたケアに徹することを指します。
開業医をしていると、紹介状の中でしばしば目にします。
終末期医療や尊厳死に対し、真剣に向き合うことが当然である現在、近隣の中核病院も緩和ケア病棟を正式に部門化されつつあることからみても、医療の方向性として正しいように感じます。
ただ、一人の人間として、最期の大切な決意、もしかすると家族を含めた人生最大の決意を、アルファベット3文字で表現することに抵抗を感じずにはいられません。
正しいこと、患者様を含め家族や医療者にとって良いことであるのは間違いないのですが、何なんでしょうか。おそらく私の要領の悪さが原因なのではと思います。
何故、こんなことを考えるのかというと、現在、我が家は、BSCの真っ最中です。
といっても、人ではなく、1才半の保護猫です。人間で言うところの20才位です。
野良猫であった宿命、猫白血病ウイルスに感染しており、その為の悪性リンパ腫を発症してしまいました。肺のある胸腔内は、ほぼリンパ腫に占拠されており、ステロイドパルス療法に反応せず、一か八かの抗がん剤治療しかありません。
面会に行くと、高度動物病院のICUは、絶えず犬や他の動物の鳴き声が聞こえ、私たちが面会に行くと、しんどいのに起きあがり、よって来ようとします。
その時点で私たちの心は決まっていました。自宅に酸素室を用意し、最期まで横で寝ようと思います。
トムにとって、うちに来て良かったという気持ちを持って旅立つことを願うばかりです。