松尾画報

松尾の独り言

病理医

子役タレントの芦田愛菜さんが慶応中等部に進学されたそうですね。正に才媛才女です。将来の夢を尋ねられると、病理医になりたいと言われたそうです。おそらく、長瀬智也さん主演のテレビドラマのフラジャイルの影響だと思いますが、病理医という概念をほとんどの方はご存知ないと思います。私自身、大学卒業後の5年間は病理学を専攻させて頂いており、都合よく能力は別として、臨床医の中ではかなり病理学に詳しい存在だと思います。病理医と言うのは、医学の中でものすごーく大きな大切な存在です。

私はいつも患者様への説明で、ガンの診断をする医者で・・・と言っていますが、少し詳しく説明しますね。私の博士号の指導教授であり、結婚式の仲人である母校の名誉教授であられる森浩志先生の講義の御言葉を今でも覚えています。「病理には生検と剖検、即ちbiopsyとautopsyもしくはnecropsyがございます。」と言った感じであり、無学の私にとって、この先生はなんで意味不明なことをより難しい言葉で説明するのだろう?と思った記憶があります。今になって思いますが、森先生は病理学が崇高であることや生命への畏敬の念を伝えておこうとされたように思います。とにかく言葉遣いや文章にした時の表現には厳しい先生でした。今でも、私がくだけた文章を書こうとしても、何となく固い表現になってしまうのは森先生のせいです。

森先生の逸話は沢山ありますが、この辺にしておいて。昔から医師を説明する有名な絶妙かつ皮肉った表現があります。「内科医は何でも知っているが何もできない。外科医は何でもできるが何も知らない。病理医は何でも知っているし何でもできる、だが終わった後である。」というやつです。これは、生検と剖検の中で後者に当てはまります。現在、臨床医をしていると生検診断に注力していますが、大学病院と勤務医の時代には、剖検診断でもかなりコアな勉強をさせて頂き、多くの現実のドラマを見てきました。学問の性質上、剖検については今後語ることはないですが、最後に一言。

「いやァー、会いたかったよォー」