松尾の独り言
病理学との出会い
松尾です。
私の専門分野は消化器病です。
その主たる手法は今や胃カメラや大腸カメラといった内視鏡です。
病変の形や周囲との関係といった形態診断が中心で、医学の中で同じく形態学を中心とする学問に病理学(現代の医療の中では一診療科という位置付けですが)という講座があります。
私は学生時代もあまり優秀ではなかったですが、当時、学生が好きな基礎医学の教室で勉強できるというカリキュラムがあり、迷わず病理学教室を選びました。
当時、病理の教室は二つの講座があり、第一病理の教授が中田勝次先生で非常に怖い教授でした。
しかし私は、良いものは良い、悪いものは悪いとはっきりおっしゃる中田先生の講義が好きでした。
私が出入りさせて頂いたのは、後に大学院へと進むことになる第二病理であり、その教授は森浩志先生とおっしゃり、非常に理論的、且つ日本語・英語を問わず言葉の使い方に非常に厳しい(うるさい)方でした。
学生時代、他の科目は及第点ぎりぎりでしたが、私にとって病理学は非常に面白く、いずれの分野の試験も高得点であった記憶があります。
森浩志教授の病理総論の最初の講義のフレーズ、今もはっきりと覚えています。
「腫瘍とは、自己の生体細胞の自律的、無限の、非合目的増殖であります。」といった感じです。ただ、医学の世界も昔の常識今の非常識なる法則もあり、無限のという部分を消さねばなりません。
それは、私が大学院時代に、アポトーシスなる概念が出てきたからです。
それは、プログラムされた細胞死のことであり、全ての細胞は無限ではなく、生体全体が不利益な方向に陥ると個々の細胞が自殺してしまうようにあらかじめプログラミングされているということが証明されたからです。固い話ですいません。