辺境のカンガルーの近況
駆け足取材
「島の特集だけで雑誌を作ろう」
数年前、そんなアグレッシブな企画に参加していたことがあります。
20~30代向けの雑誌では島移住スローライフの特集があったり、
出身者が都会から戻ってきてアーバンなお店を開いていたり、
環境やエネルギー系の企業が最先端の研究所や試験所を持っていたり。
キテるよキテる、島、キテる。よし、作ろう。
という軽いノリの会社からの発注でした。
淡路島のすぐ側の沼島へ取材に。
古事記にある日本で最初に作られた島(という解釈とする説)だとか、
だんじりが海に突っ込んでいくお祭りだとか、いくつかの奇岩だとか、
食べられませんでしたけど絶品の鱧料理だとか。
情報収集したところ、なかなかに素敵そうな島でした。
お祭りや鱧は時期ではなかったので、観光協会で写真を借りる話をつけ、
後は奇岩や島の風景のスナップ写真を撮りに行くことに。
というか、それくらいしかやることなかったんですよね。
行き当たりばったり取材にもほどがありますが、
雑誌制作の現場って、得てしてそんなもんだったりします。
それなりの山道を歩いて、島を歩いて横断します。
とはいえ私は山里育ちなので健脚な方ですし、しかも両親の実家は九州の離島。
もはや私のためにセッティングされたかのような撮影取材です。
どこか懐かしい島の風景の中、ハイテンション小走りで進んでいきます。
メタボの編集者はずっと後ろをふうふう歩いてますが、知ったことか。
山道を抜けて、島の反対側に出ると視界に入ってくる奇岩。圧巻です。
圧巻ですが…、待てよ…、そういえばスローライフやアーバンや最先端はどこいった?
ふと我に帰り、ざざーん、と砕ける波の音の前にしばし立ち尽くします。
シャッターを切り、急いで今来た道を引き返しました。帰りのフェリーの時間が迫っていたので。
編集者は奇岩までたどり着けませんでした。
今思い返しても「なんだったんだ、この取材」という感じですが。
データを整理していたら、そのとき撮った写真が出てきたので、
なんとなくですが紹介してみようかなと。
マニアックな場所すぎて、ぜひ行ってくださいとは薦められませんが、
印象に残る素敵な島でした。
昔の仕事のデータ見てると「何これ? 何の意味が?」みたいなものがいくつかあります。
そういうの見てると、情報産業ってなんなんだろう、とふと思う瞬間がありますねぇ。
まぁ、細かいこと考えすぎるとまた立ち尽くしちゃうので、とにかく手を動かしましょう。
よく分からないものに流されていることも多い毎日ですが、
それもまた楽しんでいきたいものですね。
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